浮きの小箱

雑感を小箱に詰めていきます。

読書「家族じまい」

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家族じまい  桜木紫乃

 

八月最終日。八月尽である。

ご無沙汰もいいとこの、この場所です。

「家族じまい」は、とっくに読んでいて、今読了感を書こうとしても、リアルな感想がでてこない。こまった。。

 

ストーリーはぶっ飛ばそう(笑)

フィクションであるけれど、家族構成や実家の「生業」などは、桜木紫乃さんの「お家」を深く反映しているもので、桜木紫乃さんは長女の「智代」と重ねることができる。

長女智代は、実家を出たときに、すでに親を捨てている。(気持ちの上でね)

それには、そういうふうにならざるを得ない理由もあるわけだけど。。

次女乃理は、親を思い、夫を思い、子供を思い、思い過ぎて、徐々に精神が疲弊して壊れていくという設定。

智代と乃理、心の距離が離れすぎて、それを埋めることが出来ないでいる。

 

この小説は短編集になっていて、認知症になった母と横暴な父に関わる女たちがそれぞれに、ひとつのストーリーを紡いでいく。

 

わたしは、母サトミの姉、登美子さんの章が、清々しく、優しく読めた。

情が深い人が「いい人」なら、薄情な人はどうなんだろう。いけない人なのか。

登美子さんは、情に流される人ではないが、薄情な人ではない。

人の多面性。前から見て横から見て後ろからもよーく見て、その人となりがようやく朧げにわかるというもの。

そして心の奥底は、誰にもわからないし、わかろうとしてはいけないものだ。

 

「親の介護」がテーマの物語なのに、一番感じたところは、そーゆーとこ。

 

桜木さん、この小説で「中央公論文芸賞」を取られた。

介護小説においても、目線が冷やかで、それでいて心の隅っこが燃えてるような、桜木さんの本来の気質がありありと感じられて、面白く読ませていただいた。

 

 

 

読む人がいないと思うと、いくらでも体たらくになれるものなのねぇ(笑)

張り合いがないという思う反面、怠けるだけ怠けられる。

気が楽というもの。

 

自分だけの小箱に投函する。

自己陶酔の蜜の味は、甘くて苦い。