読書「ライオンのおやつ」
ライオンのおやつ 小川糸
わたしはふつうに見えるけれど、実はへそ曲がりな気持ちを持っていて、小川糸さんが書くような、優しく温かな、赤ちゃんのおくるみのような小説は、「ふ~ん」くらいな気持ちで、実は実はなんとも思わない。(ここまでで「実は」が3回)
「ツバキ文具店」や「キラキラ共和国」だって、鎌倉が舞台でなければ、実は読んでいなかった、と思う。(また「実は」出た!)
糸さんの目を通した、鎌倉の風景や暮らしの描写はとても好きなのだけど、主人公ポッポちゃんにはそれほどシンパシーを感じていない、というのが本音だ。
「ライオンのおやつ」に戻りましょう。
穏やかな気候の瀬戸内のホスピスに主人公はいる。
余命短いひとたちが、人生の最後に食べたいおやつを、エピソードと共に手紙に書き、リクエストするというストーリーは、「死」という辛く哀しい重たい事実をやんわりとオブラートに包んだミルキィ仕立て。
糸さんの書く小説の主人公は、一貫して洗いざらしのコットンのような女性像。
リンネル系というのかしら。
糸さんのファン層もリンネル系女子が多いんだろう。
この小説、わたしにはそれほど…という感じではある。
読書「わたしの美しい庭」
わたしの美しい庭 凪良ゆう
「流浪の月」に続き、凪良さん二冊目を読了したところ。
この小説の登場人物たち、「流浪~」のあの二人を、否応なく思い出させてくれるのは、効果的なのか?
キャラクターが被るってことはあまり好ましいことではないのではないかしら。
小説の背景も空気感も、ましてやストーリーもまったく別物なのだけど、大人びた小学生の少女と、その少女と絶対的に分かり合える30前後の男子。
この部分が、二つの小説の「核」となる部分が、同じってねー。
美しいと思えた存在「三浦春馬」が亡くなった。
30才の春馬。もうこれ以上年を取らない春馬。
春馬という「美しい庭」は永久になった。
なんとなく好きな俳優さん、うっすらぼんやり思っていたけれど、いなくなって、ハッキリ気づいた。
かなり注目してたってこと。
あちらの世界から見てみて、こちらの世界に未練はないですか?
「いいや、ぜんぜん。スッキリしたよ」というのであれば、それはそれで決めたことは間違ってなかったんだろう。
決断は一瞬だったんだろう。
読書『セバット・ソング』
セバット・ソング 谷村志穂
北海道を舞台の小説のリアリティー。
メイドイン北海道の人にしかない質感というかな。
そういうものを肌で感じながら、読むことができる数少ない作家さんである。
2017年刊行の「大沼ワルツ」に続く、大沼が舞台の第二弾の小説が「セバット・ソング」。
「大沼ワルツ」は実話をもとに、若い二人が大沼で結婚し、やがて大家族になってゆくという過程と、北海道大沼地区が観光地として開かれてゆく様子が並行する、スケールの大きな物語。
こういう質のいい小説が売れてほしいと思ったものです。
かたや、今回は、大沼湖畔に佇む2つの児童更生施設が舞台。
今回も実際に七飯町に存在する「大沼学園」が小説の舞台のイメージ像というのは、分かり過ぎるくらいだ。
大沼には「セバット」という白鳥が渡来して羽根を休める場所が実際にあるそう。
主人公の兄と妹の「セバット」、安息と安寧の場所とは…。
谷村さんにとって大沼という土地は、小説のモチーフが浮かんでくる稀有な場所かもしれないです。
ある意味、大沼の捉えどころがない神秘性が、魂を揺さぶるのかも。
俳句、のようなもの 「六月」
雨だれは六月のこと書いており
もう7月なんだけどね、
6月はこんな感じで過ぎていったかしら。
そういえば良いこともあった。確かに。
今年いちばんにゆったりした日々を送った6月だった。